研究内容

 物質は無機・有機やその状態・形態、利用履歴などによらず、すべて有用な資源であり、限りある資源を有効に活用することは持続的な物質生産のためには必要不可欠です。現在でも資源の多くは天然由来で利用されていますが、将来の枯渇や偏在に伴う価格高騰などのリスク、環境保全を考慮すると、廃棄物からの回収利用も含め、効率的に活用しなければなりません。
 安定かつ継続的な物質生産を行うためには、入手が容易な元素をベースとすることが有効ですので、本研究グループでは、地球上に広く分布して存在している、鉄、ケイ素、アルミニウム、炭素に着目し、これらを基軸元素とする高機能・高性能ナノ材料を合成するための、大規模生産への展開が可能な、低コストで簡便なグリーンプロセスの開発に取り組んでいます。

■液相反応(水熱反応を含む)および固相反応(メカノケミカル反応を含む)を用いた機能性微粒子の合成プロセスの開発
<研究例>
・層状ケイ酸化合物
 (応用例) アイラアイト:フィラー・化粧品(体質顔料)・触媒
・ゼオライト
 (応用例) NaY:有害ガス吸着剤、TS-1:触媒
・磁性流体
 (応用例) 酸化鉄(マグネタイト):がん温熱治療(磁気ハイパーサーミア)発熱体・磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤
・複合粒子(ナノコンポジット)
 (応用例) マグネタイト-水酸化アパタイト:骨がん温熱治療発熱体、ニッケル-アルミナ:カーボンナノチューブ(CNT)合成用触媒
・層状複水酸化物(LDH)
 (応用例) 鉄系LDH:カーボンナノコイル(CNC)合成用触媒・有害陰イオン吸着剤・薬物送達(ドラッグデリバリー)キャリア
・ペロブスカイト型酸化物
 (応用例) ニッケル酸ランタン:可視光応答型光触媒

■数値計算(シミュレーション)によるプロセスの解析
<研究例>
・メカノケミカル固相反応の速度論的解析
・ボールミル(乾式・湿式)のスケールアップ

■実験計画法(タグチメソッド、分散分析(ANOVA)、応答曲面法、他)や機械学習を用いたプロセスの解析・最適化

《主な研究室所有機器》
粉末X線回折装置(XRD)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、原子間力顕微鏡(AFM)、示差熱・熱重量同時測定装置(TG/DTA)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、積分球付属紫外可視分光光度計、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置、ゼータ電位測定装置、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、コーンプレート型粘度計、他
遊星ボールミル、転動ボールミル、水熱反応器、超音波ホモジナイザー、高周波(1MHz)超音波洗浄機、誘導加熱評価用高周波磁場発生装置、電気炉、他